「人を狂わすというその、かに得せざる得なかった」
に辞をめて言うが、しい彼はスッと冷めた目つきで私をやる。ざめしたと言わんばかりの表情で私を下ろす。
「やはり、到底出来ていない。所はその程度というものか」
言うや否や、彼は重たい琴を物ともせず踵を返し、これ以上はないと暗に告げている。
「心が募った心で私のべが理解できると?」
「なるほど。それは失礼な事を言った。では、明日はにその音をしむにここに来よう」
「ふん。口先だけで出来るとは到底思えないがな」
どうやら休めにいていたのがに障ったらしい。音律の道をめた者にとって、何かをらわせるためにかれたのであってはにしかならないのだろう。失礼をびるように彼が立ち去るまでそのでじっとしていれば、彼は一切こちらに振り返る事もなく立ち去って行った。
次の夜はいるかどうかも分からない妖琴の琴の音をくだけにの巨木の元へれた。束も交わしていなければ、しい彼なので来るどうかもわからない。期待半分にれた所に、かくして妖琴はいた。前の夜と同じ位置に座し、私も昨日と同じ位置にむ。息をして、世界が妖琴の奏でる音だけになったかのようなに囚われ、目も眩むようなに浸る。そのだけは何もかもを忘れて、じっと彼の音だけに身を任せた。そうして余に浸っていればいつのにか妖琴の姿はなく、私はもいないの木に向かって「お事」と笑みを向ける。
そんな夜が日き、最近はあれほど感じていた疲れも感じなくなっていた。
相わらず蔓延る鬼がえる事はないが、夜にあの音をくだけでその日にあった出来事がぼんやりとどうでも良くなってしまうのだ。たとえ、その日の依がどのようにキツいものであったとしても、妖琴の琴をけば彼の音しかに入って来なくなる。
ある日、程よく一が育ってきた事もあって育成途中の二をメインに探索に出ていると何やら神が心配そうなで私の袖を引っってくる。
「どうしたの?晴明。どこか具合でもいの?」
「いや、そういうわけではないが……」
「最近、ぼんやりとしている事が多いからちょっと心配。本当に大丈夫?」
上目遣いにられ、私は安心させるように神のをでてやる。言われてみれば、最近は鬼退治の途中であろうと意が集中しきれていないがあり、博雅には「手ぇいてんじゃねぇぞ」と小言を言われたのもあった。
「すまない、心配をかけた」
そう言えば、神は少しだけ安心したように笑ってくれる。びではないのだ。ここはきちんと集中しなければならないだろう。そう意んでいると、先程まで鬼とっていたはずの以津真天がいつもの淡泊な表情でこちらに近寄って来る